1991年に九州を襲った台風19号。猛威をふるった台風は、新築の家さえも無残になぎ倒していきました。
私たちはそれまでも、決していい加減な家づくりをしていたつもりはありません。けれども、予算や工期という名のもとに妥協がなかったとも、その時の私には決して言い切れなかったのです。
「どんな小さなところにもウソがあってはならない」
「本当に価値があると、私たちが信じられるものしか、お客様に勧めてはならない」
「これからは正直な家づくりだけをしよう」
そう考え、模索していたときに巡り会ったのが「いい家をつくる会」代表の松井修三さんでした。真摯に家づくりを考えるその姿勢に、私はおおいに共感し、触発され、自分の進む道はこれしかないと思いました。
しかし一方で経営者として、「正直な家づくり」などきれいごとではないのか、果たしてそれで会社として利益を上げていけるのかという悩みは当然ありました。けれど、信じたことを実現するために知恵を絞ればいいんだ。コツコツとフォアボールやスクイズなどで点を重ねて頑張っていこうと、その時思ったのです。
そしてその気で取り組んでみると、本当に正直な家をほしいと思っているお客様は、ちゃんといらっしゃるんですね。それは、営業手腕や、価格競争で勝ち得たお客様ではない。私たちの信条に共鳴し、本当に価値のあるものを求めて来られたお客様でした。
「フェアプレイの精神は、かならず通じる」と思えた感動の瞬間でした。
M・ZEC号は大海原に浮かぶ小さな船です。乗組員たちは、出航当時よりもちょっぴり自信をつけ、たくましくなりました。
けれど、航海に油断は禁物です。私たちがめざすのは、まだ見ぬ海、まだ見ぬ大陸なのですから。
その昔、九州の地はユーラシア大陸に向かって大きく開かれていました。私たちの祖先は勇気をもって船出し、ゆたかな文化を祖国に持ち帰りました。ことにM・ZECのある中津は、蘭学発祥の地であり、かの福沢諭吉を育てた土地でもあります。
その誇りと進取の気性を忘れず、夢を持って、私たちも進みたいと思います。
これからも、多くの魅力あふれる方々と出会えることを念じながら。 |